地味に建設中だった新社屋が完成したので初出勤してきました。
勤務地の最寄り駅が変わり、駅から新社屋への行き方も知らなかったので初日はグーグルマップの指示に従い新しい建物へ向かいました。
駅から徒歩8分らしい…これは遠いのでは?と思いつつ、グーグルマップ様の指示通りに進むとなんと上がり坂が出現!!ええー!毎朝上がり坂を登って出勤!?「ちくしょー!こんな会社辞めてやる!」と最近不満がたまっていたので怒りながら坂を上がりました。
上がりきったところで今度は下り坂が出現。「あら♪下りがあるなんて楽チン!ふふーん。」と喜んで下って行くとまた上がり坂が目の前に。「コンニャロー!こんな会社絶対にすぐ辞めてやる!」とひとり息巻いていた先に新社屋が見えてきました。
あら?思ったより遠くなかった。おまけに川のせせらぎも聞こえてくる…
いいじゃないの~、と思いつつ社内へ。
入っていくと朝早くにも関わらず多くの同僚が引越しで持ってきたダンボール箱を開けてファイルを棚に詰めていました。
私も荷物を置いて、自分のダンボールを開け、ささっと棚にファイルを入れていく。
大方終わったところで、これどうしよう…というファイルが数冊現われました。
私の前の前に勤めていた人が使っていた自作のマニュアルファイルです。
横幅50センチ位はスペースを必要とするので、この際捨ててしまおうか…と思ったのですが前の社屋で、これどうしようか?とドイツ人の同僚に聞いた時に「俺だったら捨てないな。だって彼女の(前の前の勤め人)歴史が残ってるんだもん。ほら、中を見て。」と言われて一緒にファイルの中を見てしまったのです。
手書きで書かれたメモや、スクリーンショットを印刷して何か添え書きしたもの、紙が古くなって黄ばんできている説明書などなど。
うーむ。この数冊の中に頑張ってきた人の想いが詰まっている気はする…。しかも定年退職した人のファイルだしな…嫌々辞めて置いていったファイルとは訳が違う。
でもうっすら心の中で、彼の言うことも分かるけど捨ててしまったらもう二度と思い出す事もないし、一年に一度開けるかどうかも分からないファイルを置いておくのは正直意味がない気もするなぁ…と思いつつファイルの中を一緒に見ていました。
そしたら同僚が、「置いてても意味がないのは知ってるんだけど、ノスタルジックな理由で捨てられないんだ。」と言うので、何だかしんみりしてしまいました。
友人のドイツ人男性達の何人かが手書きのポストカードを旅先から送ったり、人にもらったちょっとした物を二度と見る事はないのに大切に取っておいたりするのを思い出して、あ…ドイツ人男性ってこういう事するのあるな…と思ったので傷つけてはいかん、と思い(多少渋々)ダンボール箱に例のファイル達を詰めることにしました。
そのファイルを新社屋で見て、あまり収納棚も無さそうだしどうしようかな…
と思っていたら、まだ開いている棚があるけど、何かまだ入れるファイルがある?と聞かれたので、あ!あるある、このファイル達よ、ノスタルジーが理由で持ってきたからもう二度と見る事はないと思うんだけど…その棚のスペースを使っても良いかな?と聞いたら同僚がクスっと笑いなら、「分かった、ノスタルジーね。(ドイツ語発音ではノスタルギー)」と棚に入れてくれました。
他の同僚達も、ノスタルジー用ね、と言いながら笑っていましたが、そういう一見効率の悪そうなことも受け入れてくれる穏やかな雰囲気がいいな、と棚に入れながら思いました。
他にも最近になって定年退職した人が使ってた分厚いフランス語辞書とスペイン語辞書も一緒に持ってきた人がいて、今はみんなオンラインの辞書を見るのでその辞書をひく事はないのですが何か捨てられなくて…と持ってきていました。
去った人間を思って残った人間がちょっとノスタルジックな気分になるのは自然な事なのだと思いますが、案外よくあるのは去った方は何とも思ってなくて「そんな古いファイルさっさと捨てちゃえばいいのにー!」と言ったりして。。
以前、例の女性が退職後にオフィスに顔を見せに来た時はタンクトップから出たよく日焼けした腕に頭にはサングラス、で南国から帰ってきたみたいにぱーっと明るかったので残ったこちらのイメージとは違う人生を送ってそうな感じでした。
亡くなった人の物なら遺品になるのでそれこそ形見になるし、意味合いがもっと変わってくるのでしょうが。
去った人と残った人の思惑が違うのって別れた恋人同士みたいなものかも??と思ったり…
例のファイル達はいつかドイツ人の同僚がいなくなり、私もいなくなった時に誰かがこのファイルもう要らないよね?と捨てられるのだと思いますが、それまではノスタルジーを理由に新社屋に置かれるのだと思います。できれば存在をスッカリ忘れて去りたいけれど、こうやってブログ記事にしてしまったので変に忘れられないかもしれません…。
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