ドイツで時々見かけたストリートミュージシャンは、ひょっこり思いつきでできるものではなくどこかに申請して許可をもらって演奏が必要だったそうです(今もそうなのかは不明です)。
ドイツの音楽の街で暮らしていた時、ストリートミュージシャンの演奏をよく見かけました。見かけすぎてあまり気にならなかったけど、やっぱり何故か足を止めて聞いてしまう演奏者が時々いて、上手なわけでもないのに何故なんだろう、と思っていました。
こないだ、チューリッヒ市内で若い男性がトランペットで何かを演奏していました。こちらも極上にうまいわけじゃない、でも足を止めて聞き入ってしまう。クールなチューリッヒの人々も足を止めて真剣な表情で見つめていました。
別の日、夜中にチューリッヒ市内を歩いていたとき、どこかで誰かがアコーディオンで情熱的な音楽を演奏していたようで、トラムを待ちながら聞き入ってしまいました。
街に音楽をありがとう。
前はよくそう思っていたのに、以前住んでいたドイツの街ではあまりストリートミュージシャンがおらず、長らくそう思わない生活を送ってたんだと気づきました。
ベルリンに住んでいた頃、冬の暗い天気としとしと降る雨に打ちのめされ、悲しい気分で地下鉄の駅で降りた時、構内でチェロをひく人が居て、その周りを私と同じように天気に気分を打ちのめされたであろう疲れた表情の人達が囲んで聞き入っていました。
それはそれは悲しいメロディで、本来だったらこんなに悲しい気持ちにこれ以上の悲しさはいらない、と思えそうなものでしたがその日はもう、何にも逆らえない、この状況を受け入れるしかない、という天気の日で。その悲しいメロディにそのまま悲しくていいんだよ、と言われたような、気持ちに寄り添ってもらえたような気がして癒されました。
こんな気分の落ちた日じゃないと、このメロディをここまで味わうことはできなかった、と…。そして少し元気になったのでした。
その場を去る時、街に音楽をありがとう、と思いました。
音楽のちからはやっぱり偉大ですね。
ストリートミュージシャンのいいところは、思いがけない自分の好み以外の音楽に出会えるところと、やっぱり演奏者の姿を見て、音楽って演奏する人がいるんだなと実感できるところ。
スイスでもストリートミュージシャンに出会える場がもっとあればいいなぁ、と思っています。